笙野頼子『金比羅』
笙野頼子さんの小説。新聞やインターネットでも評価が高いので読んでみた。
思想書のようで宗教書のような、一個人の半生と妄想が巧みに描かれている。

40を過ぎた女性小説家の「私」は、実は「金比羅」だった。
金比羅は黒い翼の生えた蛇神。死んだ赤ん坊の体内に入り込み、醜を極めていく。

その半生は、女性として完成してゆく自身の体への恐怖・自分を奇異なものとして見る家族や他人への抵抗・効率化された社会、能率至上主義への反発から来る闘いの物語だった。

私自身も変わり者だったので、社会における自分の居心地の悪さみたいなものは共感できる。
神仙世界への憧れのようなものもあるし、自分の体が大人になっていく怖さも分かるし、カーテンの模様からリスが飛び出てくるのが見えるような気持ちもよく分かる。

恐らく筆者をモデルにしたと思われる主人公の宗教的な価値観は、偏っていて独特であり、完成されている。他人に何を言われようが、「ふぅーん。けーっ!」と鼻で嗤い、自分の価値観を最後まで貫く。何者にも揺らぐことがない、可愛げのない金比羅。
その妄想は、フィクションでは片づけきれないようなリアリティを秘めていて尚且つ濃い。

思想書のようであり、宗教書のようであるが、「一個人の妄想として書かれた、れっきとした純文学」なのが凄い。
この世界は、笙野さん以外の誰にも書けないだろう。
ここまで密度の濃く、個性の強い作品を読んだのは初めてで、強烈に心に残った。


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柚木みやび

Author:柚木みやび
柚木みやびの日記&エッセイ。 2006.11.9~ 
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(プロフ画像はしいたけさんの絵本から拝借しています)


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